1) ローフォース・ローフリクション矯正
当院における成人矯正の基本理念に‘見えない・目立たない矯正治療’がありますが、それと同じぐらいに大切にしていることがローフォース・ローフリクション矯正です。用語解説から始めますが、ローフォースとは直訳で『小さな力』です。またローフリクションとは『小さな摩擦』を意味します。よってローフォース・ローフリクション矯正とは極めて摩擦の少ないセルフライゲーティングブラケットを使用しながら、高性能超弾性ワイヤーによる小さな力で過剰な力を排除しながら歯の移動を行う矯正治療のことを指します。
歯を動かすためには、ある一定以上の矯正力が必要になりますが、無駄に大きな力は歯肉退縮や歯根吸収などの問題を引き起こすために避けなければいけません。研究レベルでは、歯列矯正に要する最適な力のレベルは、歯根膜において血管を完全に閉鎖せず、細胞活性を刺するに足る強さでなければならないと言われています。また歯周病リスクがある成人においては、歯根や周囲組織に優しい矯正治療はとても大切で、そのニーズは高まっています。
その他、ローフォース・ローフリクション矯正にはたくさんのメリットがあります。
-
ブラケットへのワイヤーの過剰な締め付けによる治療中の痛みが少ない。
子供の頃、旧型のブラケット(ブレース)装置での矯正治療を経験された方が、再度成人になってローフォース・ローフリクション矯正を受けられると、本当にこの装置は痛くないんですねという感想をいただきます。
- 通常の矯正装置と比べ、結紮などに要する作業時間が短縮され、効率的になる
- よって、1回の治療時間や全体の治療期間が短縮できたり、通院回数を少なくできる
- 通常の矯正装置と比べ、突起部分が少ないために、歯磨きがしやすい
- 歯を抜かなくて治療できる可能性が広がる
- 歯周組織にかかる負担が小さい(歯周病の進行や歯肉退縮の回避)
- 歯根吸収が少ない
- 生理的に無理のない力をかけるシステムのため、顎関節症などの副作用が起きにくい
- 近年の審美意識の高まりにより問題になりやすいブラックトライアングルも通常の方法に比べて出にくい
ローフォース・ローフリクション矯正で使用されるブラケットにおいて、先発で最も知名度が高いものにデーモンセルフライゲーティングブラケットがあります。ただ現在ではデーモンシステム以外でも、さまざまなローフォース・ローフリクションブラケットが販売されています。以下に国内で販売されているすべてのローフォース・ローフリクションブラケットを示します。当院ではすべてのローフォース・ローフリクションブラケットを多数使用してきました。その結果、それぞれの症例において、いちばん効率のいいものを選択させて頂いております。
デーモンセルフライゲーティングブラケットと従来型の結紮ブラケットとでのワイヤー保持様式の違い
デーモンセルフライゲーティングブラケットと高性能超弾性ワイヤーの組み合わせで、さらに優しい矯正力が持続的に歯に作用します。下にシステムの違いによる歯にかかる力の差を具体的に示します。
ワイヤーをシャッター開閉式の蓋で固定するデーモンセルフライゲーティングブラケットでは強度を優先するために、すべて金属が使用されているものや、半分金属を使用されているものから発売されました。最近では上顎前歯の使用に限定される審美タイプのデーモンクリアが存在します。
ホワイトワイヤー
オプションでさらに審美的な白いワイヤーも選択可能です。
- デーモン3(オームコジャパン)
- デーモンQ(オームコジャパン)
- デーモンクリア(オームコジャパン)
- スマートクリップSL3(3Mユニテック)
- クリアティSL(3Mユニテック)
- ミニクリッピー(トミーインターナショナル)
- クリッピーC(トミーインターナショナル)
- T21(トミーインターナショナル)
- クリアスナップ(デンツプライ三金)
- STb(オームコジャパン)
- クリッピーL(トミーインターナショナル)
- エボリューション(ドイツアデンタ)
- ハーモニー(ハーモニージャパン)
2) インプラント矯正
従来の矯正治療では、歯を効率的に動かす目的で、下の図のようなヘッドギアなどの顎外固定装置が多く使われてきました。しかし、治療が成功するかどうかは、患者様がこの装置を使用するかどうかに関わっており、また使用時間が限られるため、歯科医師の思うように効率的に歯を動かすことが困難でした。
一般的な顎外固定源(アンカー)
そこで通常のインプラント(人工歯根)の応用として、下図のような矯正用インプラントが開発されました。これらの矯正専用のインプラントをアンカー(固定源)として使用し、効率的な矯正治療を行うことをインプラント矯正といいます。矯正用インプラントも通常のインプラント(人工歯根)と同じく生体親和性の高いチタンという金属で作られており、大きくスクリュータイプとプレートタイプの2種類の形態があります。通常のインプラントは半永久を目指すのでパーマネントインプラント(永久インプラント)と呼ばれ、いったん顎(ガク)に埋め込まれると基本的には除去することはありません。それに対して矯正専用のインプラントは目的が達成されれば、矯正治療完了後(約半年〜2年)に除去します。そのために通常のインプラントとは表面性状が異なり、骨としっかりと結合しすぎないような加工がされています。一時的に使用して用が済んだら除去されるので、テンポラリーインプラント(暫間インプラント)とも言われます。
矯正用インプラントを活用することで、治療期間の短縮・治療精度の向上・外科矯正の可能性を低くできるなど、さまざまなメリットがあります。
現在、矯正用のインプラントアンカー(固定源)として一般的なのがこのスクリュータイプです。埋込みに際しての傷口が小さく、出血もほとんどなく術後の痛みや腫れがほとんどないことが特徴です。患者様にも受け入れやすく、外科に不慣れな歯科医師でも簡単に行えるイメージがあるようです。ただ、神経や近接する歯根などの損傷リスクがない訳ではありません。外科手術に対応できない矯正医では矯正専用インプラントの埋込みを病院へ委託するところもあります。そういった場合、矯正治療の歯の動きにあわせて、本数を増やしたり、位置を変えることにも柔軟な対応が難しくなります。また、抜け落ちた場合の無駄な追加費用が発生したり、責任の所在があいまいになることもあります。結果的に、インプラントアンカーの十分な効果が発揮されないこともあります。
部位ごとにさまざまな形のプレートがあります。固定は3本の短いスクリューで行うので、1本で植立するスクリュータイプのインプラントアンカー(固定源)よりも大きな力に耐えることができます。ただ埋め込み手術時、傷口が少し大きくなるので、スクリュータイプよりも患者様の外科的な負担はやや大きくなります。強力なアンカー(固定源)として使用できるので、歯列全体の移動が必要になる場合などにはとても有効です。
他院での矯正治療後の不具合で来院された場合の再治療時など、ダイナミックな歯の動きが要求される場合にしばしば使用します。
3) 促進矯正法(スピード矯正)
促進矯正法(スピード矯正)とはアメリカを中心に研究・開発が進められている外科的手法を併用した矯正治療方法です。促進矯正法(スピード矯正)により通常2〜3年かかる成人の動的矯正治療期間を大幅に短縮することが可能になりました。歴史的には古く、1959年のKöle法の『コルチコトミー&オステオトミー法』に始まり、2005年 Wilckoの『AOO』に至るまで、徐々に急速歯牙移動のメカニズムが解明されてきました(RAP現象)。さらに、骨移植を行うAOO法では、骨の薄い部分を厚くできる歯槽骨再生の技術により、保定後の安定性を高める効果も確認されています。
とても忙しい現代社会において、矯正治療期間の短縮は永遠のテーマの一つであり、世界の矯正学会では一分野を築いています。残念ながら日本においては、大学教育の影響で矯正のみが単独で扱われ、しかも促進矯正法(スピード矯正)は外科手術を伴うために、外科手術に対応不可能な矯正歯科医が二の足を踏んでいるといった社会的背景があります。これは成人の歯周病患者における歯周矯正においても認められる傾向で、歯科の中での複数の分野が絡み合う部分で起こりがちな現象です。そういった意味では、昔よりも現代の矯正治療はますます歯科総合力が要求されています。
しばしば『スピード矯正(促進矯正法)』は歯の表面にはりもの(ラミネートベニア)をしたり、セラミック冠をかぶせたり、セラミックブリッジなどを行って歯並びを整える『セラミック矯正』と混同されることがあるようです。『セラミック矯正』は圧倒的に短期間で歯並びを整えることができるので、学術用語ではありませんが、俗名で‘クイック矯正’とか‘スピード矯正’とも言われます。混同されやすいので以下にそれぞれの俗名の解説を示します。
注)インターネット上で『6ヶ月で完了するスピード矯正』などとすべての矯正治療が6ヶ月間で完了するかのような錯覚を感じさせる表現がありますが、それがこの『促進矯正法』であれば現実からかけ離れている過ぎる表現かもしれません。現実的に『促進矯正法』により骨の代謝を活性化し、急速歯牙移動は起こるのですが、比較的動的治療期間が短縮できる非抜歯ケース(小臼歯などの便宜抜歯を行わないケース)でも精密な仕上げの期間はとても大切で、どうしても数ヶ月の時間を失います。私自身、多数の促進矯正症例を経験してきた結果として報告させて頂きます。
以下に当院の促進矯正法の症例を示します。参考になれば幸いです。
【促進矯正症例1】 30歳女性 抜歯ケース
ガタガタを治したい。挙式までに矯正治療を終わらせて欲しい。
ピエゾサージェリーによるコルチコトミー&オステオトミー法【 Köle(1959)】
before & after
【促進矯正症例2】 37歳女性 抜歯ケース
上の前歯を引っこめたい。最近、歯肉がさがってきたのも気になる。海外勤務になるので、矯正治療を急ぐ。リンガル(舌側)矯正希望。
ピエゾサージェリーによるAOO法 【Wilcko(2005)】
before & after
4) ロープロファイル・ローフリクションリンガル(舌側・裏側)矯正
そもそもリンガル(舌側・裏側)矯正は1970年代に日本人によって開発されたもので、現在に至るまでさまざまな舌側装置の開発と治療システムの整理により全世界で発展してきました。そしてアメリカ人と違い、矯正装置が見えることを嫌う日本人のニーズにマッチし、近年ますます人気が高まっている矯正方法です。裏からの見えない矯正装置により、他人から気づかれないで矯正治療を進めることが可能で、成人でも矯正治療が受けやすくなりました。
ただ装置が歯の裏側にあるために、口の中が狭くなり、発音がしにくかったり、装置が舌に接触するなどにより口内炎ができやすいなどの問題点がありました。そのために小型化された裏側ブラケットの開発が必要とされました。その結果、完成された装置がSTbリンガル(舌側・裏側)ブラケットです。STbリンガルブラケットはロープロファイルで小型化され、また初期の細いワイヤーにおいてはローフリクション(摩擦抵抗が小さい)です。STbリンガルブラケットのようなローフリクションで小型化された装置で行うリンガル(舌側・裏側)矯正のことをロープロファイル・ローフリクションリンガル(舌側・裏側)矯正といいます。
下に従来型の装置とSTbリンガルブラケットの比較を示します。小型化された装置は患者様には快適なのですが、術者にとっては治療がしにくく技術が要求されます。ただ当院では、裏側装置において、極力小型化された装置を使用しています。当院オススメのロープロファイル・ローフリクションリンガル(舌側・裏側)ブラケット装置には『STbリンガルブラケット』と『クリッピーLリンガルブラケット』があります。
話しやすい
食べやすい
29歳女性-叢生(乱杭歯)-裏側からの装置希望
STb小型化装置を使用したリンガル(舌側・裏側)矯正治療
矯正治療の流れ
before & after
29歳女性-叢生(乱杭歯)-裏側からの装置希望
STb小型化装置を使用したリンガル(舌側・裏側)矯正治療
話しやすい
食べやすい
歯磨きしやすい
クリッピーLリンガルブラケットはデーモンブラケットのようなセルフ・ライゲーションシステムです。装置は小型化されており、クリップ開閉式構造でブラケットがワイヤーを保持する部分における摩擦抵抗が小さいのが特徴です。そのため以下のメリットがあります。
- 痛みが少ない
- 歯根に優しい(歯肉退縮や歯根吸収のリスク低減)
- 治療期間の短縮
- 清掃性にすぐれる
Q1)装置に慣れるまで要した時間はどれくらいですか?
Q2)発音しにくいのはどのような発音ですか?
Q3)知人から歯並びの相談を受けたら、リンガル(舌側・裏側)ブラケット法、
及び表側のマルチブラケット法のどちらをすすめますか?
5) CAD/CAMリンガル(舌側・裏側)矯正
STbブラケットのようにロープロファイルで小型化されたリンガル(舌側・裏側)装置が開発されたことにより、ずいぶんと口腔内が広くなり、発音などの問題が解消されました。ただ、STbのような通常のリンガル(舌側・裏側)ブラケットは規格化された既製品なので、使用には調整が必要になります。既製のブラケットを歯の裏側に取り付ける際に、歯の表側ではおこらないような問題が発生します。下の写真1のように歯の裏側の形態は複雑で、同じ人の左右対照な部位でも歯面の形は同一ではありません。そのために歯をきれいに配列するには、ブラケットと歯面の間をレジンベースという樹脂で位置調整を行いブラケットを歯面に装着しなければなりません(写真2)。せっかくブラケットは小さく作られているのですが、このレジンベースの厚みによりまた口の中が狭くなるといった現象がおこることもあります。そしてブラケット自体は非常に精度が高く、強度もあるのですが、レジンベースの部分で精度が低くなったり、また強度不足によるブラケットの脱離が発生します。そして、治療の終盤になると、このレジンベースの精度の限界が問題になり、ワイヤーによる調整が必要になることがあります(写真3)。
そこで、さらなる発展系としてでてきたのがCAD/CAM舌側矯正システムです。CAD/CAM技術を利用して、患者様にオリジナルのリンガル(舌側・裏側)ブラケットを作製します。28本の歯を動かすのであれば、それぞれの歯面にぴったり適合した28個のカスタムのブラケットを作製するので、STbのような既製ブラケットで必要だったレジンベースは必要ありません。よって歯面からの距離を無駄なく最小限度で抑えることができ、装置の違和感は少なく、歯面への適合も高く、治療中のブラケットの脱離も限りなく少なくできます。そして、最も歯の配列に大切な精度も保たれています。問題点はその分、費用が割高になることです。
現在、国内で取り扱いできるCAD/CAM舌側矯正システムにはニッケルなどの金属アレルギーの問題を解消した『インコグニート(アイブレース)』とセルフライゲーションブラケットの『ハーモニー』があります。
インコグニート(アイブレイス)システムは1997年にドイツの矯正医であるビッヒマンによって考案・開発されて以来、ヨーロッパでは「もっとも優れた舌側矯正法」として認識されてきました。インコグニートはドイツ語名で、日本ではその名称で扱われていますが、アメリカなどではアイブレースという名称で広まっています。
CAD/CAM技術により、歯一本一本にあわせて作製されるインコグニート(アイブレイス)ブラケットはあなたのためだけの完全オーダーメイドです。既製のブラケットとは違い、ブラケットベースを歯面にピッタリと適合させるこのシステムの精度は高く、ワイヤーもロボットが曲げるために形状が非常に正確です。そのため、歯の動きにムダがなく効率の良い治療ができます。
ブラケットの素材はニッケルなどの金属アレルギーの問題を解消するために金合金で作られています。そのために裏側の装置ですが、ゴールド色がつよく、シルバーの装置と比べると、口を開けた時などは少し目立つかもしれません。また、金属の費用が高額なために治療費用が高額になる欠点もあります。
インコグニートシステムの製造工程
3次元画像化技術とCAD/CAM光造形技術を活用
注)通常のリンガル矯正ではワイヤーは歯科医師が屈曲しますが、インコグニートシステムではロボットが事前に屈曲したものがドイツ本社から届けられます。したがって、歯の理想的な位置の情報は、矯正装置ではなく、ロボットで屈曲した矯正用ワイヤーだけにあることになります。このために、矯正用ワイヤーが治療途中で折れたりすれば、ドイツまで矯正用ワイヤーの再製作を依頼しなければならなくなります。その間、送られて来るまでは治療を中断することになります。舌側矯正技術を習得した歯科医の一部が、このシステムを取り入れることを躊躇し、抵抗を感じるのはこういった理由があるからです。また、治療経験が少ない歯科医師が安易に手を出して、収拾がつかなくなりトラブルに発展することもあるようです。舌側矯正においても、さまざまなシステムへの理解はとても大切になります。
フランスの矯正医であるパトリック C. クリエル によって考案・開発されたハーモニーリンガルCAD/CAMシステムは2011年、世界初カスタムメイドセルフライゲーションリンガル(舌側・裏側)矯正システムとして 紹介されました。インコグニート(アイブレース)のさらなる進化系として、デーモンブラケットのようなキャップ開閉式、セルフライゲーティングブラケット構造を備えています。 CAD/CAM技術により作製される薄いブラケットベースの精度は非常に高く、歯一つ一つにぴったりと適合するため、治療中のブラケットの脱離も限りなく少なくすることができます。ワイヤーもロボットが屈曲し、非常に正確で、システムとしてムダのない効率の良い治療が可能になりました。まさしく、世界完全オーダーメイドリンガル(舌側・裏側)矯正システムと言えます。欠点はインコグニートと同じで、コストと海外までの郵送のやりとりに時間がかかることです。
デーモンブラケットのようなセルフ・ライゲーションシステム。クリップ開閉式構造でブラケットがワイヤーを保持する部分における摩擦抵抗が小さい。
- 痛みが少ない
- 歯根に優しい(歯肉退縮や歯根吸収のリスク低減)
- 治療期間の短縮
- 清掃性にすぐれる
CAD部分において、歯牙の配列イメージを自由にコンピュータ上でセットアップでき、しかも従来法に比べてシュミレーション精度が高い。
CAM部分において、コンピュータ上でのセットアップ歯牙配列にあわせてカスタムでリンガルブラケットが作製される。歯牙への適合精度は高く、従来型に比べて治療中のブラケット脱離の比率がかなり低い(一般的に、リンガルブラケット治療の問題点にブラケットの脱離がある)。
ハーモニーリンガルCAD/CAMシステムによる矯正治療の流れ
6) マウスピース(クリアプレート)矯正
マウスピース矯正装置にもざまざまな種類があります。国内で取り扱いできるものにはインビザライン・エシックス・アクアシステム・クリアアライナー(CA)・アソアライナー・ストレートラインなど様々な種類があり、近年では子供用のインビザラインティ―ンやキッズラインなど、対象年齢幅も広くなってきています。
一般的な治療の流れは歯型を採り、歯型から作製した模型上で約1mmの厚みの樹脂シートを型押しし、透明のマウスピースを作製します。そのマウスピースを1日約20時間装着し、約2~3週間毎に新しいマウスピースに交換しながら徐々に歯を移動させる矯正治療方法です。通常のワイヤー(ブラケット・ブレース)矯正法とは違い、装置が取り外し式で、ブラケットやワイヤーを使用しないので目立ちにくいのが特徴です。ただ歯の移動量が大きいケース(抜歯を必要とするケース)などではマウスピース矯正単独ではワイヤー矯正に比べて不利な場合があります。そのような場合は一定期間のみ通常のワイヤー矯正を行い、その後マウスピース矯正に切り替えたり、併用したりなどして対応することも可能です。取り外し可能なので食べたい物がなんでも食べられるというメリットもあります。また、食後の歯磨きや装置の洗浄も簡単に行うことができます。
- 食事の時、矯正器具(マウスピース)を外して自由に食事をする事ができる(歌をうたう場合や楽器演奏時なども)
- 矯正器具(マウスピース)を外して清掃できるため口腔内を清潔に保ちやすい
- 矯正器具(マウスピース)が透明なため審美的に優れる(目立たない矯正治療)
- 矯正器具(マウスピース)を利用して矯正と同時にホームホワイトニングを行うことができる
- 症例により適応範囲がある
- 装着時間を厳守しないと十分な治療効果が得られないことがある(1日のうち食事と歯磨き以外でおおよそ20時間以上装着しなければならない)
では、どのマウスピース矯正(クリアプレート矯正)がいちばんすぐれているのでしょうか?私自身、2004年からあらゆるマウスピース矯正装置を使用しましたが、その答えはズバリ!‘インビザライン’です。
まずインビザライン以外のマウスピース矯正システムは約2~3週間毎の来院ごとに、新しいマウスピースを作製するために、毎回新しく歯型を採らなくてはなりません。通常の成人全顎矯正期間の1年半~2年間に何度も何度も歯型を採ることはとても不経済です(患者様もつらい)。しかしインビザラインシステムは開始時に最低1回の歯型を採るだけで治療を進行させることが可能です(もし、ズレが発生しても2~3回です)。そのために必然的に来院回数も減少します。その理由はマウスピースの製作方法にあります。同じようなマウスピース(クリアプレート)矯正システムがいくつかありますが、製作精度の違いが治療過程及び結果に大きな影響を与えます。下記にその他のマウスピース矯正の製造工程とインビザラインの製造工程の違いを示します。
インビザラインの製造工程
3次元画像化技術とCAD/CAM光造形技術を活用
基本的には1回歯型を採って(もし、ズレが発生しても2~3回)、3次元画像化技術とCAD/CAM光造形技術により各ステージのマウスピースを一度に作製します。ある程度まとめてマウスピースをお渡しできるので来院回数を減らすことができます。また手作業部分で発生する誤差を最小限度に抑え精度も安定しています。
現状の歯並びに合わせて作製したマウスピースを調整して、歯を移動させる。歯科医師のさじ加減が大きく、連続的な歯の動きに対応不可能。
歯型から作製した模型を糸のこで分割し、次の移動目標まで配列し、その上でマウスピースの樹脂シートを打ち込み、成型する。1回のマウスピースの移動量の上限は約1mm。規格写真撮影の比較により配列前後の歯の移動量を計測設定しようとするが、2次元的であくまでも手作業で感覚的な部分が多い。次のマウスピースに進む前に、毎回新たな歯型を採る必要性がある。後戻りなどの部分的な歯の移動では有用性は高い。
2011年12月現在、全世界でアライン・テクノロジー社は173万人の治療実績があり、保有している莫大な治療データから、さらなる治療の円滑化・短期化を目指す研究を日々行なっています。そして、新型G4のスマートフォース機能により、歯牙移動のコントロールがさらに向上しました。
まさしくインビザラインは現代のコンピューター技術を駆使したマウスピース矯正装置と言えます。ただ、インビザラインシステムを開発したアライン社(2000年~)は矯正治療の知識や経験の浅い先生方の乱用を恐れているために、取扱いに関して医療機関の認定条件を定めています。
当院は2006年にインビザライン正規医療機関として認定されました。そこから、国内ではそれ以上古いデータはないぐらいに、こののマウスピース矯正技術を臨床活用してきました。年々適応症が広がり、その結果、かなりの経験数を積み、当院での主力矯正装置の一つとなりましたが、まだまだ発展の余地のある治療方法だと実感しております。ただ症例選択をきっちり行えば、すばらしい治療結果が得られますのでご安心下さい。治療技術としては通常のワイヤー矯正治療とは無関係のようですが、矯正治療の基本概念が要求されます。ある意味、表側や裏側からのワイヤー(ブラケット・ブレース)矯正を十分に熟知していなければマウスピース矯正自体リスクのある治療方法かもしれません。
近年よく遭遇する事例は、一般の歯科医院でワイヤー矯正を始めた後に、当院のことを知り、矯正装置を変更して、やりなおす患者様達です。非常に無駄な時間とお金を使います。もし、矯正治療を検討されている患者様は以下の動画をご覧頂きたいと思います。一助になれば、幸いです。
そして、当院は随時に矯正無料相談も行っております。時間が許す方はご来院頂き、お口の中を見て、現在の歯並びがマウスピース矯正治療の適応であるかどうかをお話しさせて頂きます。従来の装置に比べてのメリットおよびデメリットなどもお伝えできればと考えております。
薬機法において承認されていない医療機器について
マウスピース型矯正の「インビザライン・システム」矯正治療のオプション治療「オーソパルス」の治療・処置は「医薬品医療機器等法(薬機法)」においてまだ承認されていない医療機器を用いた治療・処置となり、ウェブサイトにて患者さまへの情報提供を行うにあたって、「限定解除の4要件」を満たすための記載を以下に掲載いたします。なお、当院はマウスピース型矯正(インビザライン)の有効性を認め導入をしております。
未承認医薬品等であることの明示
マウスピース型矯正システム「インビザライン」とフォトバイオモジュレーション装置「オーソパルス®」は、薬機法上の承認を得ていません。インビザラインのサポートソフトである「クリンチェック・ソフトウェア」は薬機法上の承認を得ています。
入手経路等の明示
マウスピース型矯正システム「インビザライン」は米国アライン・テクノロジー社の製品となります。こちらのシステムを、アライン・テクノロジー・ジャパンを通じて利用・入手しております。
フォトバイオモジュレーション装置「オーソパルス(orthopulse®)」はカナダのバイオラックスリサーチ社の製品です。バイオラックスリサーチ社から個人輸入により入手しております。
国内の承認医薬品等の有無の明示
マウスピース型矯正(アライナー矯正)は様々なタイプ・システムが開発されています。国内でもインビザラインと似たマウスピース型矯正装置が販売されており、そのいくつかは国内で薬事承認されております。
日本で『医療機器としての矯正装置』と認められるためには、「薬事承認されている材料を使用して、日本の国家資格を持った歯科医師or歯科技工士が製作したもの」・「薬事承認された既製品」でなければならず、海外で製造されいるマウスピース(インビザライン)は残念ながらその限りではありません。
オーソパルスに関しては日本において類似の製品は販売されていません。
諸外国における安全性等に係る情報の明示
インビザラインは、全世界で600万以上の症例数を持つ治療システムです。歯科矯正が潜在的に持つリスク以外でインビザラインに固有の重大な副作用の報告はありません。
オーソパルス(OrthoPulse®)は、FDA(アメリカ食品医薬品局)で認証を受けた医療機器です。アメリカ・カナダの他、ヨーロッパなどで、医療機器として承認を受けています。重大な副作用についての報告はありません。
マウスピース矯正の最高峰、インビザライン治療とは?
ますます矯正治療ニーズが高まる中、さらにご利用いただき易いように通院回数を少なく、低価格でご提供する新しいインビザライン治療オプションです。
- 軽度から中程度の不正咬合(マウスピース作製個数14個以内)
- 部分矯正治療
- 過去に矯正治療をして、修正治療が必要な場合
- 過去に矯正治療をして、後戻りによる再治療が必要な場合
- 来院回数を減らして、治療をしたい場合
※適応範囲がありますので、詳細はお尋ね下さい。
来院回数
インビザライン・ライトが適応できる歯並びかどうかを見せて頂きます。無料来院相談受付中
歯型どり、口腔内及び顔貌写真撮影、レントゲン撮影(矯正専用レントゲン含む)などアライナー作製のための準備をさせて頂きます。
装置の装着方法・取り扱いを説明.。すべてのアライナーを同時にお渡しします。
すべてのアライナーの使用終了後に来院。チェック。
※装着時間が不適切な場合は治療効果があがりません。はじめに設定した治療期間が延長したり、再度型どりが必要となる場合もありますのでご了承下さい。
費用
600,000円(外税) | 治療の長短にかかわらず定額 |
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【インビザライン症例】 32歳女性 非抜歯ケース
歯並びを治したい。楽器を演奏するので、取り外し式の矯正装置希望。
術前
治療の流れ
治療前の状態
歯型をスキャンニングしてコンピュータに取り込んだ状態(CAD)
コンピュータ上での治療目標のシュミレーション
シュミレーションデータから作製したマウスピース装置を装着(CAM)
マウスピース(クリアプレート)矯正終了時の状態
before & after
治療結果とシュミレーションの比較
マウスピース矯正では一つのマウスピースで移動できる歯の移動量が限られています(最大で約1mm)。そのために、治療を完了させるために数段階のマウスピースを順に作製していかなければなりません。よって、その都度に新しい歯型が必要になります。前者のインビザラインシステムではその途中段階での歯型のイメージを段階的にコンピュータ上でシュミレーションし作製することができるので、型を採る回数を限りなく少なく抑えることが可能です(基本的に最初に1回)。しかし、このクリアアライナーでは新しいマウスピース毎に型どりの必要性があります。また歯型での移動量のチェックが2次元的で、マウスピース製作も手作業になるためにやや煩雑になる部分があります。よって歯の移動量の大きい全顎矯正治療には不向きです。ただ、軽度の部分矯正治療などでは単純で費用を抑えられるなどのメリットもあります。
開発は韓国の矯正歯科医が行い、日本ではアソ・インターナショナル社が唯一ライセンスを受けて生産していましたが、ライセンス契約が切れたために2010年9月より提供が中止になりました。ただ、その後アソアライナーという商品名で同じようなマウスピース矯正システムが継続されています。
クリアアライナーの後継マウスピースシステムで基本的な考え方及び製作方法は同じです。
【クリアアライナー症例】 27歳女性 非抜歯ケース
数年前に矯正治療を終了した。少し、後戻りがあるので治したい。負担が少なく、目立たない矯正装置を希望。
装置製作の流れ
7) 見えないリテーナーと目立たないリテーナー
『動的治療期間』での配列完了後、ブラケット(ブレース)矯正装置を外し、『保定期間』が開始されます。きれいになった歯並びをその状態が戻らないように維持することを保定といい、そのために装着する装置のことをリテーナー(保定装置)といいます。一般的に、その保定に必要な期間は歯の移動に使われた期間(動的治療期間)とほぼ同じと考えて下さい。長ければ長い程いいと言われます。後戻りのリスクなどを減らす意味でとても大切な期間といえます。
矯正力で歯を動かすために、部分矯正などでも最低半年の『動的治療期間』が必要になります。全体的なマルチブラケット(ブレース)治療の場合は平均2年ぐらいの『動的治療期間』が必要になります。つまり一般的な成人矯正の場合、合計約4年前後が、全体矯正治療期間となります。
ただ現実的には長い動的矯正治療が終了し、ブラケット(ブレース)装置を外しきれいな歯並びを獲得すると、患者様が油断してしまって、リテーナーの装着がおろそかになることがしばしばあります。せっかくきれいな歯並びを獲得しても、後戻りしてしまっては意味がありませんので、リテーナーの装着厳守は大切なことです。ただ2年間も表側のブラケット(ブレース)装置つけた後に、もう表側に目立つリテーナーは装着したくないといった患者心理も理解できます(下図写真)。
- 従来のリテーナー(取り外し式)
- ホーレータイプリテーナー
- スプリングリテーナー
リテーナーにもさまざまな種類がありますが、そう言った理由から近年ではできるだけ審美的ストレスの少ないリテーナー装置が人気です。納得して頂けるものを、必要な期間きちんと装着していただける方がより安心できると考えております。
以下に見えないリテーナーと目立たないリテーナーを示します。
見えないリテーナー
ボンドAスプリント
保定開始時に整列した歯の裏側に接着剤で固定します。裏側からの装置ですので表側から見えることはありません。また保定期間中に患者様ご自身で取り外す必要はありません。保定期間中は定期検診で清掃状態などをチェックし、保定期間終了時に外します。
目立たないリテーナー ~その1~
目立たないリテーナー ~その2~
目立たないリテーナー ~その3~
クリアリテーナー
動的矯正治療終了後の歯型に、厚さ約1.0mmのプラスチックシートを打ち込んで作製します。薄く口腔内での装着感はいいのですが、かみ合わせの部分がシートに覆われて、上下の歯と歯が直接接触しません。よって、積極的に咬み合わせを安定させたい場合、長期の使用は禁忌になります。また、強度面で長期安定性にかけます。基本的には、マウスピース(クリアプレート)矯正で使用される材料と同じような素材になります。
メリットはこのリテーナーを使用して、同時にホームホワイトニングが可能です。ホワイトニング専用のマウスピースを作製する手間を省くことができます。当院で矯正治療を受けられた患者様にはホワイトニング料金を半額でご提供させて頂いております。詳しくはお尋ね下さい。