セラミック矯正治療は通常のワイヤー(ブレース)矯正治療とは種類を異にする歯並び改善法です。通常のワイヤー(ブレース)矯正治療は歯を削らずに、矯正力により歯を移動させて歯並びを整えます。そのための歯の移動時間が必要で、部分矯正であっても最低半年〜1年間はかかります(通常の全顎的矯正治療であれば、動的治療期間は約2年間)。それに対して、セラミック矯正治療では歯の表面にはりもの(ラミネートベニア)をしたり、セラミック冠をかぶせたり、セラミックブリッジなどを行って歯並びを整えます。
長所は圧倒的に短期間で歯並びを整えることができることです。そういったことから学術用語ではありませんが、俗名で‘クイック矯正’とか‘スピード矯正’とも言われます。混同されやすいので以下にそれぞれの俗名の解説を示します。
今回解説するセラミック冠を被せたりする治療とセラミックブラケットで行うワイヤー(ブレース)矯正治療が混同されることがある。
セラミック:1本120,000円(税抜)
今回解説するセラミック冠を被せたりする治療とコルチコトミーやオステオトミーなどの外科手術を併用した促進矯正法と混同されることがある。
上下顎:300,000円(税抜)
※矯正基本治療費に加算
その他の長所はワイヤーを使わないので、治療期間中の見た目を気にする必要がなく、ワイヤー装着のわずらわしさがないことです。またセラミックはご自身の天然歯よりきれいに改善できる自由度があります。その他には、歯周病で歯が弱っている場合にも有効な場合があります。矯正力が歯への負担となるために、必要な部分のみをセラミックで改善できるといったメリットです。
短所は治療に際し、歯を大なり小なり削ることにあります。そしてケースによっては神経の治療が必要になります。もともと冠を被せる必要性があるような大きな虫歯があったり、すでに過去に冠が装着されているような場合では、歯を削ることの抵抗感は少ないかもしれません。ただ、元々きれいな歯の場合は時間をかけて通常のワイヤー(ブレース)矯正治療法を選択するほうが、歯の長期的予後を考える上で好ましいかもしれません。
費用の面から考えると、全顎矯正治療費用と限定されたセラミック矯正費用の比較もあるかもしれません。
最近の美容整形外科では、歯並びも同時に治療を行うところが増えています。美容整形では、時間と技術を要する通常の矯正治療がなかなか困難な環境下にあり、説明段階で患者様には通常の矯正治療の選択肢は与えられず、セラミック矯正のみが説明され治療されることがあるようです。おまけに来院回数を無理やり減らそうした結果、不十分な神経(根っ子の)治療のために、セラミック装着後早期の段階で痛みが発生し来院される患者様がいます。セラミックの適合状態もよくなく、歯茎に接するセラミックの下地の金属が黒く見えていたり、またオールセラミックをすすめられた場合でもギャップが存在するためにうまくブラッシングができず、歯肉が赤く腫れ上がっていたり、継ぎ目の部分から虫歯が進行していたりします。結局、やりなおしになり、患者様が泣き寝入りするケースが見受けられます。
よって、セラミック矯正のコンサルティングは、通常のワイヤー(ブレース)矯正治療及びセラミック矯正治療、そして基本的な歯科治療のすべてでの総合診断及び治療が可能な医療機関で行われるべきであると考えます。どちらかの技術に偏っていると、歯科医師は自然とそちらへ患者様を誘導してしまう可能性があります。じっくりと時間をかけてワイヤ―(ブレース)矯正を受けるのか、それとも短時間でセラミック矯正で問題を解決するのかの最終判断は患者様ご自身にあります。限られた時間や治療希望範囲など相談しながら、患者様の条件の中で最上級の結果を出せるように努めております。
以下に当院の症例を示します。参考になれば幸いです。
症例1 ~抜歯ケース~
51歳 女性
昔、治療した前歯が変色しているので、きれいにしたい。歯並びも同時に治したい。
術前
治療の流れ
患者様は歯列矯正治療はしたくないということでした。代わりのオールセラミック治療で歯並びの改善を行うために、患者の合意を得て、状態のよくない歯や位置の悪い歯を抜歯しました。
抜歯部位の治癒後、精密な型取りを行なってオールセラミックブリッジを作製しました。
オールセラミックブリッジを装着しました。
(オールセラミックの選択により見た目は天然歯とほとんど変わらなくなり、金属アレルギーの問題なども解決できます。)
before & after 4ヶ月後
症例2 ~非抜歯ケース~
21歳 女性
前歯2本が出っ歯。海外転勤があるので、早急に歯並びを治したい。
術前
治療の流れ
患者様は歯列矯正治療はしたくないということでした。代わりのオールセラミック治療における術前診断として、模型上で形態が調和させられるかどうかの術前シュミレーションを行ないました。
十分なコンサルティングの後、患者の合意を得て、支台歯形成を行い、精密な型取りを行ないました(歯軸の補正量が大きいために、神経の治療も行いました)。
オールセラミッククラウンを作製し、装着しました。
(オールセラミックの選択により見た目は天然歯とほとんど変わらなくなり、金属アレルギーの問題なども解決できます。)
before & after 2ヶ月後
注)歯軸の補正量が大きいために、神経の治療が必要になった