よくある質問Q&A ~BEST3~
どういう基準で矯正する医院を選べばいいのですか? |
なぜ、成人矯正するのに健康な歯を抜かなければならいのですか? |
成人矯正を考えているのですが、治療中に装置が目立つのが嫌で迷っています。最近、舌側矯正とかマウスピース矯正とか聞きますが、違いとかあるのでしょうか? |
Q1)どういう基準で矯正する医院を選べばいいのですか?
最近、インターネットの問い合わせや知り合い・親戚などからよくこの質問を受けます。一般的に矯正治療は一生に一度の治療ですので、歯科医院選びに慎重になるのは当然のことだと思います。
近年、矯正治療を行う歯科医院の数は増加傾向にあり、社会的な意識の向上とともに矯正治療を受けられる方も増加傾向にあります。その反面、かかりつけ歯科医院などで簡単に治療を開始し、その後転院などの相談で当院へ来院される方が増えているのも事実です。予定通り治療が進まずに困っていたり、治療後数年で元のような歯並びに戻っていたり、頭痛や肩こりなどの不快症状がひどくなったなど、さまざまな状態でお越しになられます。そしてたいていの場合、治療費用の問題が大きく関わってくるといった状態です。医院選択は、最終的に患者様ご自身の決断になると思いますが、以下にさまざまな条件からみた私なりのアドバイスを書きます。参考になれば幸いです。
歯科医院の規模は?
医院従業員数が増えるにつれて、院長自身、治療に集中するというよりは人事管理に追われるようです。歯科治療全体が分業化され、特に矯正治療のような特殊歯科技術は院長では対応できない所が多いため、月に一度ぐらいのアルバイトの先生の派遣により行っているところが多いようです。なんといっても、最大の問題点は治療請負の責任者である院長(代表者)が矯正歯科治療の知識がない場合や、また具体的に患者様自身の治療経過を把握していないことです。アルバイトの先生は治療時は一生懸命治療を行うのですが、アフターフォローを含めて責任の所在がはっきりせず、ぼんやり治療が進められることがしばしばです。また、治療途中に装置が外れたなど、緊急時の対応も難しく、治療が円滑に進まない一要因となります。
矯正のみ行っている歯科医院と
矯正以外の治療も合わせて行っている歯科医院では?
これはどちらがすぐれているとは一概にいえません。確かに矯正のみを行っている歯科医院では、矯正のみを行うので、そのことは熟練していると思います。ただ実際の矯正治療は多様化し、小児矯正治療においては虫歯の問題、成人矯正治療においては虫歯や歯周病の問題、またインプラント・セラミック治療などが複雑に絡み合ってくることがしばしばあります。当然、矯正治療に関わる抜歯(親知らずや小臼歯の便宜抜歯)も必要になってきます。単に矯正治療のみであれば2~3年間で済みますが、生涯において口腔内の健康や歯並びの維持を考える上では、総合的な視点からの矯正診断を受ける意味はとても大きいと考えられます。矯正治療が終了した後も、矯正治療だけでなく一口腔全体のメインテナンスが必須です。以下に、当院での小児と成人のそれぞれの具体的な矯正治療を含めた口腔管理の流れを示します。
小児矯正治療と口腔管理の流れ
*通常は矯正治療を始める前に虫歯の問題を解決しておきますが、現実的には矯正治療途中で口腔内清掃状態が悪いために虫歯の治療が必要になる場合があります。その場合でも、矯正治療を継続させながら早期に対応することはとても大切になります(問題が小さいうちに)。すべての歯科治療において、責任の所在を含めて一括口腔管理をさせて頂くことはとても大切なことだと考えております。
成人矯正と口腔管理の流れ
※矯正治療開始前に虫歯や歯周病の問題を解決しておくのが基本原則になりますが、現実的には矯正治療途中で口腔内清掃状態が悪いために虫歯や歯周病の管理が必要になる場合があります。その場合でも、矯正治療を継続させながら、早期に対応することはとても大切です(問題が小さいうちに)。
※成人矯正の相談にお越しになられた時点で、すでに過去の治療で冠やブリッジなどが存在することがしばしばあります。不正な歯並びの時に作られた冠やブリッジは不自然な形をしていることが多いために矯正治療後にかみ合わせの長期安定性や審美性のためにやりなおしが必要になることがあります。そういった矯正以外の追加治療で顎関節症などの問題を引き起こさないためにも、総合的な咬合(咬み合わせ)診断は重要になります。すべての歯科治療において、責任の所在を含めて一括口腔管理をさせて頂くことはとても大切なことだと考えております。
Q2)なぜ、成人矯正をするのに健康な歯を抜かなければならないのですか?
最近、インターネットの問い合わせでよくこの質問を受けます。矯正治療前に数件の歯科医院へ歯並びの相談に行くと、ある歯科医院では4本の小臼歯を抜歯しなければならないと言われるし、またある歯科医院では非抜歯で治療できると言われるといった場合があるからだと思います。
また、一部の歯科医院のホームページ上では『当院では、すべての矯正治療において健康な歯の抜歯を行いません』や『非抜歯矯正専門』などと'歯はできるだけ抜かずに矯正をしてもらいたい'という患者心理につけ込んだ誇大広告などもあります。まったく患者様にとっては非常に困惑する状況だと思います。
歴史的にみても、現代矯正学の基礎を作ったアングル大先生(アメリカ~1930年)は非抜歯(歯を抜かない)の矯正治療を普及させようとしてきましたが、1940年にアングル大先生の一番弟子であるツウィード先生はその教えに背き、「抜歯による矯正の再治療100症例」というタイトル論文をアングル学派のアングル歯科協会で発表し、抜歯矯正の方が治療後の安定性が保たれると示し大騒ぎとなった経緯があります。そういった'抜歯VS非抜歯'の論争はその後も継続し、それぞれの矯正流派として今日に至っているという現状があります。
では当院ではどうかというと、冷静に診断結果を最優先し、柔軟に対応しております。以下に当院の抜歯と非抜歯の指針を示します。参考になれば幸いです。
最初から歯を抜こうと考えることはありません。まず第一に、何とか抜かずに治療できないものかと考えます。しかし現実的には、デコボコな歯をきれいに並べたり、出ている歯を引っ込めたりするためにはどこかに配列するスペース(隙間)を確保する必要性があります。まずは歯を抜かずに配列スペース(隙間)が確保できないか、次の(1)~(3)の方法を考えます。
人間の歯というものは通常28本あります(親知らずを除いて)。このうち上下左右の一番奥の歯(歯科では7番と呼びます)をもっと奥に移動して歯並び改善のためのスペース(隙間)を確保できないかと考えます。もちろん奥に移動できる限界もあり、その量には個人差があります。歯列の前後移動によるスペース確保において、前歯を前方に出して歯並びを整えることも可能です。しかしきれいに歯が並んでも出っ歯では意味がありません。口元とのバランスを考慮する必要性があります。
歯列弓の側方への拡大を考えます。しかし成長が終了した永久歯列(成人歯列)において、拡大できる量には限界があります。一般的に拡大方法の種類によりますが、最高でも25歳までが拡大時期の限界といわれています。また過度の歯列弓拡大は矯正治療後の戻りなどの原因となるために注意が必要です。
歯というものは表面がエナメル質でコーティングされています。この部分の1/3程度(0.5mm)であれば削っても、その後きれいに磨くことで虫歯になったり、しみたりするのを防ぐことができます( ジャック・シェリダン教授 1985年)。そこで隣り合う歯と歯の間を、それぞれの歯に対し、少しずつ削って隙間を作ります。1隣接面につき最大1mmを上限として、歯列内で最大で合計8mmのスペースが確保できます。このスペース(隙間)量はおおむね小臼歯1本分の抜歯することにより確保できるスペースに相当します。
上記の(1)〜(3)の3つの方法により歯並びを整えられるかを第一に考えた後、それでもなお、デコボコ等が取りきれない場合には、前歯を少し前方に出すことによって問題解決できないかを考えます。矯正学として、顎(アゴ)に対する上下の前歯の理想的な植立(生えている)角度は、ある程度決まっています。しかし、その角度は一点ではなくてある程度の幅があり、その範囲で前方へ出して歯を並べることは可能です。ただし、無理すると口元の突出感や口が閉じづらいといったような状態になり、横顔の形もベストでなくなるかもしれません。
以上のことを考えた上で、歯を抜いたほうが美しい口元を作り上げられると判断された場合には、歯を抜くことを相談の上で決めていくことになります。成人矯正における一般的な抜歯部位は、犬歯(糸切り歯)の後ろの小臼歯(歯科では4番or5番)です。上下の顎(アゴ)の前後的位置関係を考慮した結果、2~4本抜くことになります。決して歯を抜くことによって、機能的な問題(噛みづらくなるなど)が起こるといったようなことはありません。
無理をして非抜歯で一時的に歯並びが改善されても、後戻りなどが起こって長期的に安定しなければ意味がありません。くちびるなどの軟組織の緊張度も歯並びに影響を及ぼすため、総合的な視野から抜歯・非抜歯の判断をしなければなりません。よって私は『すべての症例において、当院では非抜歯で対応します』と結論づける矯正医の考え方には反対です。
現実的にボーダーライン症例(ぎりぎりの症例)においては、患者様の意見を尊重することもあります。あくまで治療の主人公は患者様であり、歯科医師の専門的な判断基準と患者様の希望とのすり合わせができる部分は誠意をもって対応すべきであると考えております。
Q3)成人矯正を考えているのですが、治療中に装置が目立つのが嫌で迷っています。
最近、舌側矯正とかマウスピース矯正とか耳にしますが、違いとかあるのでしょうか?
日本においても、以前に比べて矯正治療自体、子供に限定されるものではなく、成人においても年々増加傾向にあります。50歳を超えた方でもしっかりと歯を管理され、矯正治療を希望される方がしばしばいらっしゃいます。
そして矯正装置においては、仕事などに差し支えないような審美的な矯正装置が人気です。よって'見えない矯正治療'や'目立たない矯正治療'を希望される方が増えています。世界的には、ヨーロッパや日本のようにできるだけ矯正装置が目立たない方がいいとする考え方とアメリカのように装置が見えることをステータスとする考え方があります。しかもアメリカでは現在もメタル製(金属製)のブラケットが主流です(下図)。
しかし当院では、2000年(H12)でメタルブラケットの積極的使用を中止しました。その後、成人矯正においては'見えない矯正治療'や'目立たない矯正治療'を中心に行ってきました。以下に、当院で使用しているさまざま矯正装置をご紹介いたします。参考になれば幸いです。
完全に外から見えない装置ではなく、できるだけ色調が目立ちにくい装置を使用します。
上図の白クマさんのような感じが理想です。
完全に外から装置は見えません。
上図のように白クマさんが見えない感じです。
目立たない矯正治療 その1
さまざまなメーカーから同じような商品が販売されています。しかし正直なところ、製品よって審美性にバラツキがあります。当院では歯面の上でいちばん目立ちにくく、変色しにくい装置を選択して使用しております。ワイヤーに白色やゴールドのものを使用するとさらに審美的になります。
さまざまなクリアブラケットとゴールドワイヤー
クリアブラケットとホワイトワイヤー
流行のデーモンブラケット
ワイヤーをシャッター開閉式の蓋で固定するセルフライゲーティングデーモンブラケットにもいろいろと種類があります。強度を優先するために、すべて金属が使用されているものや、半分金属を使用されているものから発売されました。最近では上顎前歯の使用に限定される審美タイプのデーモンクリアが存在します。
目立たない矯正治療 その2
マウスピース矯正装置にもざまざまな種類があります。国内で取り扱いできるものにはインビザライン・エシックス・アクアシステム・クリアアライナー(CA)・アソアライナー・ストレートラインなど様々な種類があり、近年では子供用のインビザラインティ―ンやキッズラインなど、対象年齢幅も広くなってきています。
一般的な流れは歯型を採り、歯型から作製した模型上で約1mmの厚みの樹脂シートを型押しし、透明のマウスピースを作製します。そのマウスピースを1日約20時間装着し、約2~3週間毎に新しいマウスピースに交換しながら徐々に歯を移動させる矯正治療方法です。通常のワイヤー(ブラケット・ブレース)矯正法とは違い、装置が取り外し式で、ブラケットやワイヤーを使用しないので目立ちにくいのが特徴です。
ただ歯の移動量が大きいケース(抜歯を必要とするケース)などではマウスピース矯正単独ではワイヤー矯正に比べて不利な場合があります。そのような場合は一定期間のみ通常のワイヤー矯正を行い、その後マウスピース矯正に切り替えたり、併用したりなどして対応することも可能です。取り外し可能なので食べたい物がなんでも食べられるというメリットもあります。また、食後の歯磨きや装置の洗浄も簡単に行うことができます。
では、どのマウスピース矯正(クリアプレート矯正)がいちばんすぐれているのでしょうか?私自身、2004年からあらゆるマウスピース矯正装置を使用しましたが、その答えはズバリ!'インビザライン'です。
まずインビザライン以外のマウスピース矯正システムは約2~3週間毎の来院ごとに、新しいマウスピースを作製するために、毎回新しく歯型を採らなくてはなりません。通常の成人全顎矯正期間の1年半~2年間に何度も何度も歯型を採ることはとても不経済です(患者様もつらい)。しかしインビザラインシステムは開始時に最低1回の歯型を採るだけで治療を進行させることが可能です(もし、ズレが発生しても2~3回です)。そのために必然的に来院回数も減少します。その理由はマウスピースの製作方法にあります。同じようなマウスピース(クリアプレート)矯正システムがいくつかありますが、製作精度の違いが治療過程及び結果に大きな影響を与えます。
見えない矯正治療
舌側(リンガル)矯正は1970年代に日本人によって開発されたもので、世界に先駆けて実用化され、70年代の後半には世界中にその技術が発信されました。特に、矯正治療の普及率が高いアメリカで最初に受け入れられました。しかし、その頃はまだ舌側矯正の治療技術が熟成しているとは言えず、材料も未発達であったこともあり、表側の方法と比べて『治療方法が難しい』『治療時間が長くかかる』『結果がよくない』などの難点も多く、結果的にはあまり流行しませんでした。一度は下火になった舌側矯正ですが、80年代後半になって、やはり'見た目'を気にする日本人のニーズに合わせて日本の一部の矯正歯科医がさらなる技術の研究開発を進めました。そして同時期に、同じような傾向が強かったヨーロッパ(特にフランス・イタリア等)や韓国でも、もう一度舌側矯正の技術を高めようという動きが広まっていきました。舌側矯正治療システムの整理と、舌側矯正用超弾性ワイヤーの開発などで舌側矯正治療がもう一度見直しされ、ヨーロッパで『ESLO(ヨーロッパ舌側矯正歯科学会)』という学会が設立されました。そしてその後、ヨーロッパだけでなく全世界の舌側矯正の発展と普及を目指して『WSLO(世界舌側矯正歯科学会)』が設立されました。
というふうに、現在ではきちんとした研修を受け、症例数をつまれた矯正歯科医であれば表側からの矯正治療と変わらぬ水準の治療が可能であるというのが世界の舌側矯正の認識です。ただ残念なことに、まだ日本においても、否定的な矯正歯科医がいるのも事実です。2012年現在、日本の大学歯科教育において、舌側矯正は一般的でないので、そのことも影響していると思います。開業矯正医の間でも、技術が要求されるために表側の矯正治療の経験があっても、二の足を踏んでいる状況も見えます。しかし、『見えない矯正治療』や『目立たない矯正治療』を取り組む上で舌側矯正治療の技術は必須となります。実際の臨床ではマウスピース矯正(クリアプレート矯正)のみでは対応できない症例も存在し、どうしても舌側矯正の適応症と判断される症例が見受けられます。舌側矯正治療の技術がないにもかかわらず、患者のニーズに答えようとマウスピース矯正(クリアプレート矯正)のみで無理やり治療をすすめる歯科医院が存在するのも事実です。また、上半分だけ裏側から行うハーフリンガル法もあるのですが、ハーフリンガル法のみだけをすすめたりする医院では症例数が少なく上下リンガル法の経験が少ないことも推測されます。舌側矯正治療は矯正歯科医の技術と経験値を試す治療法で、矯正歯科学の集大成の治療方法と言えるかもしれません。
「目立つ矯正装置」 と「目立たない矯正装置」「見えない矯正装置」の種類
目立つ矯正装置
目立たない矯正装置
見えない矯正装置
さまざまな矯正装置の口腔外からの見え方の比較
リンガル(舌側・裏側)矯正装置
リンガル(舌側・裏側)矯正装置使用による口腔内変化
Q1)装置に慣れるまで要した時間はどれくらいですか?
Q2)発音しにくいのはどのような発音ですか?
Q3)知人から歯並びの相談を受けたら、リンガル(舌側・裏側)ブラケット法、及び表側のマルチブラケット法のどちらをすすめますか?
ハーフリンガル(舌側・裏側)矯正
よく目立つ上半分は裏からのリンガル(舌側・裏側)ブラケット装置で、下半分は表側からのマルチブラケット装置で行う矯正法のことをいいます。メリットはその分、費用負担が小さくなることと舌などが裏側装置に当たる違和感を減らすことができます。
【症例】 24歳 女性
少しでも費用負担を小さくしたいので、ハーフリンガル(舌側・裏側)矯正で歯並びをなおしたい。